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鈴木タケル

#43『アームターンタイプVS.ボディターンタイプ』

「ドライバー飛距離と方向性の比較」

ゴルフスイングの方法は、過去から現在でも様々な理論や方法が混在し、もはやゴルフ談義をするうえでの楽しみの一つにさえなっている様相です。
その中で、よく議論されているのは、腕を返して飛距離を伸ばす方がいいのか、腕のターンを抑えて方向性を重視した方がよいのかという問題です。
この問題に関しては、Phil Cheetham氏によって2014年に発表された論文で明らかにされています(引用1)。
Cheetham氏は、腕を返すことをHandle Twist Velocity:HTVとしてゴルフクラブの捻りを定量的に評価しています。
ダウンスイングからインパクト時にクラブフェースをスクエアに戻すために必要なクラブターンの角速度が高くなるグループをHi-HTVグループ、対照的に低くなるグループをLo-HTVグループと定義してドライバーの飛距離と方向性を比較しています。

この研究では、インパクトに向けてクラブの捻り、腕を大きく返すグループをHi-HTVグループとして呼称していますが、海外ではローラー(回転)と一般的に呼ばれ、一方、腕を返さず押すような動きの打ち方のLo-HTVグループは一般的にプッシャー(押す)とタイプ分けすることが多いようです。
それと同じような意味で、それぞれオープンフェイスやクローズドフェイスと表すこともあるようです(図1)。

図1.両タイプを象徴するトップオブスイングのフェース向きと様々な呼称

この研究では、米PGAツアーと欧州ツアー参加者の64名が対象者という信頼性の高い調査でした。
しかも、ツアー優勝経験者はそのうち46名とエリートプレーヤーが研究の対象となっています。
64名のプロゴルファーをスイング分析から、Hi-HTVグループ(32名)とLo-HTVグループ(32名)に分けました。
なお、ツアー優勝者の数はどちらのグループも同数の各23名でした。

この研究の仮説は、Hi-HTVグループではダウンスイングからインパクトにむけてクラブターンが多いことから飛距離は出るが方向性が悪くなるというもので、対照的にLo-HTVグループではクラブターンが少ないことから方向性はよくなるが飛距離が少なくなるというものです。
しかしながら、実験参加者のツアー統計を比較すると、クラブヘッドスピードととフェアウェイヒット率の比較では有意な差がないことが明らかにされました(表1)。
Hi-HTVのクラブヘッドスピードは48.9±2.5m/sであり、Lo-HTVでは48.0±2.0m/sでほとんど差がありません。
また、ドライビング精度の比較ではフェアウェイヒット率が比較され、それぞれ62.3±6.3%と63.9±7.0%と統計的な差はいずれも確認されませんでした。

表1.両グループのクラブヘッドスピードとフェアウェイヒット率の比較

この研究から、どちらのタイプのスイング方略を採用してもプロのような高度なスキルに達することができることを証明しています。
また、どちらのタイプでもクラブヘッドスピードやドライバーの方向性に有意な差は確認されず、Hi-HTVでもLo-HTVでも飛距離や方向への優位性はないと考えられました。
プロゴルファーが異なるHTV戦略(高いHTVと低いHTV)を用いても、精確なスイングが可能であることを示しています。
体力や身体要素に応じたタイプ指導を行うことが重要であると示唆されています。

  1. Cheetham, P. J. (2014). The relationship of club handle twist velocity to selected biomechanical characteristics of the golf drive (Doctoral dissertation, Arizona State University).