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鈴木タケル

#51『アプローチショットとバンカーショットのクラブヘッドスピード差』

バンカーショットはプロ・アマを問わず「難しいショット」として認識されています。
実際に、USPGAツアー2024年シーズンのデータを見ると、10~20ヤードからのバンカーショットのサンドセーブ率は58.85%であり、同距離の芝生からのアプローチショットのセーブ率65.83%と比較しても成功率が約7%低いことが分かります(引用1)。
エクスプローションショットでは、芝生と比較して砂の抵抗がクラブに多くかかるため、プレーヤーはあらかじめクラブヘッドスピードを増大させスイングしていると推測されます。
しかしながら、バンカーショットを対象とした定量的な研究は極めて少なく、芝生からのアプローチショットと比較して、どの程度スイング強度が異なるのかは十分に明らかにされてきませんでした。
今回は、15ヤードという実践頻度の高い距離を採用し、アプローチショットとバンカーショットにおける成功試技のクラブヘッドスピードを比較することで、バンカーショットに必要なスイング強度の目安を明らかにすることを目的とした、研究結果を報告します(引用2)。

実験には、プロゴルファー6名、アマチュアゴルファー7名の計13名の男性ゴルファーが参加しました。
平均年齢は43±11歳で、全員が右打ちでした。
使用クラブは同一のサンドウエッジ(ロフト角56°、バウンス角10°)とし、芝生からのアプローチショットとバンカーショットの双方において、クラブフェースをスクエアに構えたノーマルなショットを行うように指示しました。
ターゲットは15ヤード先に設定し、ボールが前後1m以内(計2mエリア)に静止したショットを成功試技と定義しました。
成功試技が確認されるまで何球でも打つことができ、成功時のクラブヘッドスピードを記録しました(図1)。

図1.実験設定

結果:バンカーショットでは約2倍のスイング強度が必要

芝生からのアプローチショットでは9.89±1.14m/s、バンカーショットでは21.22±3.06m/sとなり、両者の間には有意な差が確認されました(図2)。
これは、15ヤードという同一距離であっても、バンカーショットではアプローチショットのおよそ2.2倍のクラブヘッドスピードが必要であることを示しています。

図2.クラブヘッドスピードの結果
  • 15ヤードのバンカーショットは、アプローチショットの2.2倍のクラブヘッドスピードが必要であり、バンカーショットのスイング強度の1つの目安となる。
  • 一般的にいわれるバンカーショットは「3倍程度」という助言は、妥当であり、砂の柔らかさやクラブフェースの開き方などの状況差があること、アベレージゴルファーでは脱出優先であることを考慮すると現場感覚と一致した調査結果といえる。
  • 一方、本研究の結果は、距離や砂質などから限定的な調査結果であり、様々なバンカー環境があるため、プレーヤーの状況判断能力を高めることも必要である。
  1. PGA Tour. Statistics. https://www.pgatour.com/stats (2025年9月15日閲覧)
  2. 鈴木タケル.(2025年11月15日).15ヤードのアプローチショットとバンカーショットのクラブヘッドスピード差.日本ゴルフ学会第35回大会発表抄録集,pp. 24–25.日本ゴルフ学会.