#53『練習場と実コースにおけるティーショットパフォーマンスの差異』
「環境条件の違いに対する適応能力」
一般に、練習場では安定して打てるにもかかわらず、実コースでは同様のパフォーマンスが発揮できないという現象は多くのゴルファーに見られます。
特に、ドライバーでのティーショットでは、練習場と条件が近いこともあり、実コースで同じことができないことに自己嫌悪することもあります。
これは単なる技術不足ではなく、「環境条件の違いに対する適応能力」の差に起因している可能性があります。この問題に対して、大阪大学研究者である難波秀行氏と我々ティーチングプロが協力して実験をおこなった、2025年日本ゴルフ学会大会で発表された内容を紹介します(引用1)。
実験の概要
対象はアマチュアゴルファー5名およびプロゴルファー5名であり、弾道測定器を用いてデータ収集が行われています。
測定は練習場と実コースの2条件で実施され、クラブスピード、ミート率、ボール初速、キャリー距離、打出角、左右偏差といった指標を分析対象としました。
練習場は環境が比較的一定であるのに対し、実コースでは風やコースレイアウト(OBやバンカー)も目に入り、心理的プレッシャーなどの変動要因も含むため、両者の比較により環境制約の影響を検討する設計となっています(図1)。
実験では、各自のドライバーを使用して、それぞれ3球を打ち記録しました。


結果:統計的な差は確認できなかった
プロとアマを問わず全体を分析した結果、クラブスピードやミート率、キャリー距離などの平均値において、実は、練習場と実コースの間に有意な差は認められませんでした。
しかしながら、個人別に練習場とコースを比較すると、変化が大きい人もいました。
クラブヘッドスピード
クラブヘッドスピードの比較を個別にみると、個人差が大きく、遅くなる人もいれば速くなる人もいました(図2)。
これは、プロもアマも傾向はなく、どちらの属性でも遅くなる人もいれば速くなる人もいました。
また、どちらでも最大で約2m/sの変化がありました。
この結果は、環境変化への対応に個別性があることの難しさを示唆しています。

ミート率(スマッシュファクター)
ボールスピード÷クラブヘッドスピードで算出されるミート率(スマッシュファクター)は、どの程度クラブの芯に当たったかを示す指標です。
ミート率の場合は、プロとアマでは傾向があり、プロでは変化がわずかなのに対して、アマは1名を除き低下する傾向を示しました(図3)。
プロは、風やOBやコースの景色などの外的要因に過度に影響されず、練習場と同様のスイングを維持することができたと考えられます。
また、1球ミスしたとしても次の1球には微細な修正を行うことができます。
一方アマチュアは、OBや風などの環境要因に心理的に影響され、ミスを契機に方向性を過度に意識し、いわゆる当てにいくことでスイングがぎこちなくなる傾向があります。
今回の実験でも、実験参加者からは、上記のような状況に陥ったとの報告もありました。
アマでは、一見同条件に見える練習場とコースでのドライバーショットでも、環境要因の影響を受けて、打点の安定性が低下しやすいことが示唆される結果となりました。

実践への応用
同一条件下(練習場)での反復練習では、環境変化への適応能力は十分に養われません。
そのため、ターゲットの方向や、打球環境、心理的プレッシャーなどの条件を意図的に変化させた練習が重要です。
こうした環境に適応させる練習により、実戦での再現性向上が期待されます。
もちろん、単純反復練習が必要ないということではなく、学習者レベルに応じた練習設計を組むことが大切です。
環境適応型スキル習得
現代の運動学習理論では、スキル習得をプレーヤー中心(内部:プレーヤーの身体をどう動かせばよいかに意識する)だけでなく、環境(外部)との関わりを含めて考えることの重要性を示しています。
ゴルフ練習でも、人間・環境・技術を一体的に捉え、環境との相互作用を踏まえた環境適応科学的アプローチが求められる時代となっています。

引用文献
- 難波秀行、山本比嘉利、泉岡翔、鈴木タケル.(2025年11月15日).ゴルフにおけるティーショットパフォーマンスの実コースと練習場における比較分析―アマチュアとティーチングプロの特徴について―.日本ゴルフ学会第35回大会発表抄録集,pp. 26–27.日本ゴルフ学会.