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鈴木タケル

#2『アプローチでの寄せワンでParをとる確率』

プロとアベレージゴルファーの大きな違いにグリーンに近づいてからのアプローチ技術の差が挙げられます。
テレビの中継でよく映し出されるようにプロは、ピンチと思われる場面でもいわゆるOKの距離、1m以内に寄せることで難なくパーを拾っている場面をよく目にします。
しかしながら、プロであってもどんなところからでも高い確率でパーが取れているとは限りません。
今回は、USPGAツアーにおける近距離でのアプローチの実態に迫りたいと思います

SCRAMBLING(スクランブリング)とは

スクランブリングとは、「パーオンを逃した場合に、パーもしくはそれ以下のスコアを取ること」と定義されています。
また、それを割合(%)で表すことが多く、例えば18ホールのうち、10回グリーンを外しパーオンしなかったホールがあったとして、そのうち5回パーを拾うことができればスクランブルは、10ホール中5ホールとなり50%になります。
スクランブルには様々な取り方がありますが、多くの場合はグリーン近くからのアプローチショットをピンに寄せて、それを1パットで終える、いわゆる「寄せワン」を成功させることでスクランブリングを取る場合が多いです。

近距離ほど有利

2021年USPGAツアー全試合全選手の距離別スクランブル率が公式サイトに発表されています(文献1)。
2021年の距離別スクランブリング率を図1に表しました。

(図1 2021年USPGA距離別スクランブル 文献1より作図)

全選手の平均では、10ヤード以下の場合は85.80%とかなり高い確率で寄せワンが取れています。
この中には、比較的難易度の低いグリーン外からのパターでのショットも含まれています。
10~20ヤードでは65.97%、20~30ヤードでは54.45%と距離が長くなるにつれて確率が低くなっています。
プロであっても30ヤード前後では、50%の成功率になってしまい、決して簡単ではないことが理解できます。
全選手全ホールのデータを取った場合、残りの距離が直接的に難易度に反映されています。

距離だけで片付けられないSSI

上記では、残り距離が短いと確率が高く有利であることを紹介しました。
しかしながら、近年SSI:ショートサイドインデックスという分析法が、#1で、紹介したマーク・ブローディによって開発されました(文献2,図2)。

(図2 ショートサイドインデックス 残り距離からホールアウトまでに要する打数)

これによると、ある1ホールだけを分析した場合、決して残り距離が短いことだけがスコアを決めているわけではないことを示しています。
カップとボールを結んでグリーン面を長く使える場合と、グリーンエッジからすぐにカップがある場合(ショートサイド)では難易度に大きな差があることを示しています。
図2では、赤の⇔は30ヤードを示しています。グリーン手前と右サイドのロングサイドでは、そこからホールアウトにかかる打数は、約2.5打となっています。
一方グリーン奥と左側のショートサイドでは約3.0打となり、同じ30ヤードのミスをした場合でもショートサイドに外してしまうと約0.5打も難易度が上がってしまいます。
このことから、ホールの特性やレイアウト、ピンポジションなどもプレーヤーは考慮しなくてはならず、ここにゴルフの難しさや面白さがあります


■参考文献

USPGA公式HP内 STATS https://www.pgatour.com/stats/categories.RARG_INQ.html
GOLF.COM https://golf.com/news/mark-broadie-new-short-side-index-pga-tour-statistic/