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鈴木タケル

#12『初期ボール飛び出し方向②』

クラブの進行方向(Club Path)よりもフェースの角度(Face Angle)によってボールの初期飛び出し方向(水平方向)の60~80%が決定されることを#11では説明しました。
今回は、初期ボール飛び出し方向のもう1つとして、垂直方向に対するボール飛び出し方向に関して説明します。

水平発射角(Horizontal Launch Angle)と垂直発射角(Vertical Launch Angle)

初期ボール飛び出し方向には厳密には2種類あり、一般的には#11で示した水平方向への発射角を指すことが多い、しかしながら、ボールがどの高さに打ち出されたのかを表す垂直方向への発射角もあります(図1)。

図12-1 初期ボール飛び出し方向2種 Horizontal Launch AngleとVertical Launch Angle
図1 初期ボール飛び出し方向2種 Horizontal Launch AngleとVertical Launch Angle

過去の研究でもインパクト時ロフトの約80%の高さに飛び出す

1999年にはD-Plane(Dプレーン)で知られるJorgensen氏によれば、インパクト時のロフト角度に向かって80%強の高さに飛び出すことを既に方程式により導き出しています(文献1)。
インパクト時のロフト角度は、Dynamic loft:ダイナミックロフトと呼ばれ、クラブにつけられている元々の角度とは別であり、いわゆるハンドファーストの形で真っすぐなフェースでインパンクとした場合は、ダイナミックロフトは元々のクラブがもっているロフト角より減少します。

入射角(アタックアングル)よりもダイナミックロフトの影響の方が大きい

ボールの垂直発射角度に影響を及ぼす要素として、ダイナミックロフトの他にクラブヘッド入射角があります。
しかしながら、入射角の影響は約20%であり、ダイナミックロフトの影響は約80%とする2つの報告があります(文献2.3)。
垂直発射角度に影響する要素として他にボールやクラブの種類と摩擦などの影響がありますが、ダイナミックロフトが最も影響の大きい要素となっています。

クラブの番手によりダイナミックロフトの影響は変わる

弾道分析研究について研究情報を発信しているPINGの研究者グループと、Jorgensen氏のD-Plane理論を元にしているといわれるトラックマンの発信している情報を比較してみました(表1)。
その結果もほぼ同等であり、ロフトの少ないクラブ(ドライバー)では約80%となり、ロフトの大きいクラブ(ウェッジ)では約70%という結果を示し、ロフトが大きいクラブ程、ダイナミックロフトの影響は少ないと報告しています(図2)。

表1 ボール発射角度に対するダイナミックロフトの影響(文献2.3から引用改変)
表12-1 ボール発射角度に対するダイナミックロフトの影響(文献2.3から引用改変)

図12-2 ウエッジ(約50度)を使用した場合のボール発射角(約35度) ※表1より概略図
図2 ウエッジ(約50度)を使用した場合のボール発射角(約35度) ※表1より概略図

まとめ

・初期ボール飛び出し方向には2種あり、Horizontal Launch AngleとVertical Launch Angle、水平方向(左右方向)と垂直方向(上下方向)の発射角度である。
ロフトの少ないクラブほどアタックアングルの影響は高く、ロフトの多いクラブほど影響は低い、クラブロフトとボールとの摩擦が影響していると考えられている。
実際のプレーへの影響を考えると、垂直方向へのボール発射角度は、ダイナミックロフトの約70~80%の影響を理解していればプレーへの影響は少ない。

■参考文献

1.Jorgensen, T.P. The Physics of Golf; Springer Science & Business Media: Philadelphia, PA, USA, 1999.

2.Trackman University. Available online: https://trackmanuniversity.com

3.Wood, P., Henrikson, E., & Broadie, C. (2018). The influence of face angle and club path on the resultant launch angle of a golf ball.
In Multidisciplinary Digital Publishing Institute Proceedings (Vol. 2, No. 6, p. 249).