#15『計測データから何を練習するべきか?』
【距離vs方向】
計測器を使って得たデータから、何を重点的に練習するべきか?
特にゴルフにおいて相反する要素である距離と方向のどちらを優先して練習をおこなうかについて、以前にはなかったデータの扱い方の問題を、現代ゴルファー及び指導者は解決していかなければなりません。
この問題に対して、ゴルフデータ革命の著者マーク・ブローディは2009年には、距離と方向に関する一定の指標と判断の方法を示しています(文献1.2)。
角度単位の精度(誤差角度)とは
ブローディは、方向に関する指標に角度単位の精度(誤差角度)を使用しています。
これは、ショットの最終ボール停止位置が目標から何度ズレが生じたかを表す角度です(図1)。
飛距離と左右誤差距離が計測可能なドップラーレーダーであれば、2つの数字から三角関数により誤差角度を算出することができます。
また計測器により、誤差角度は直接算出されます。
どのボールを計測球として採用するべきか?
ドライバーショットであればプロとアマ問わず、ショットを安定させることは難しく、数球打てば本人の普段のショットより偶発的に良すぎるショットや悪すぎるショットが出ることがありあます。
この普段のショットというのが厄介です。どの基準をもってその人の普段のショットとするべきか?という問題です。
普段のショットを計測球として採用しなければショットの評価を過少または過大に評価してしまいます。
この問題に対してブローディは、飛距離を基準に第3四分位数(3rd quartile)を採用することを推奨しています。
具体的な例は、6球打った時は上位から2番目の記録を採用することを推奨しています(図2)。
参考:総務省統計局(四分位数 quartile points)
具体的方法 6球計測の場合
飛距離と左右誤差距離の計測が可能なドップラーレーダーを活用したトラックマンやフライトスコープまたはトップトレーサーなどの計測器が適しています。計測項目の用語の呼称については各機種で多少違いあるため確認が必要です。
①ドライバー6球の計測を行う 計測項目は飛距離と左右誤差距離
例)2番目の飛距離のショットを採用 飛距離 220ヤード 左右誤差距離 40ヤード
②2番目に飛距離が長いボールを採用し誤差角度を算出する
例)飛距離 220ヤード 左右誤差距離 40ヤード 誤差角度10.5度(10.47度)
参考:高さと斜辺から角度と底辺を計算
③飛距離と誤差角度から図3のグラフにプロットする
例)図3では飛距離220ヤードで誤差角度10.5度は黄色プロット例となる
この例では、飛距離の練習よりも方向性の練習が必要となる
- グラフの基準線から上にプロットされた場合は方向性を高める練習・身体トレーニング
- グラフの基準線から下にプロットされた場合は飛距離を高める練習・身体トレーニング
その他の実践的応用法
- 10球計測し、第三4分位数である3番目に飛距離がでたボールを採用して図3グラフと照合し距離と方向の練習方針を決める
- 定期的に計測してトレーニングの進捗確認や今後のトレーニング計画に活用する
- 1球ごとにグラフと照合し、即時フィードバックを活用し結果と感覚のズレをなくす
- 10球計測して、全てのショットをグラフにプロットし、距離と方向のどちらが優勢であるかを確認する。
この方法では計測球数を増やすほど正確な評価が可能となる
■参考文献
- マーク・ブローディ(2014) ゴルフデータ革命, プレジデント社,
- Broadie, M., & Ko, S. (2009). A simulation model to ana-lyze the impact of distance and direction on golf scores. Proceedings of the 2009 Winter Simulation Confer-ence, (pp. 3109-3120)