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鈴木タケル

#16『スクランブルゴルフに関する有用な情報』

「どのボールを採用するか?」パッティング編

スクランブルゴルフおいて、戦略のひとつに「どのボールを採用するか?」という問題があります。
ボールの採用選択についてはチーム内でも意見が分かれるところです。
個人の得意と不得意、またはその状況から得られるインスピレーションがそれぞれのプレーヤーにより異なるために意見が分かれることもしばしばです。
本項では、グリーン上でのボール選択について統計的な視点から戦略の参考となるように説明します。

基本的には短い距離を優先して選択

Every Shot Countsの著書マーク・ブローディは、USPGAツアー2003~2012年の400万回に及ぶパッティングデータから以下のような残り距離に対するパッティング成功率を示しています(引用1図1)。
このデータから、スクランブルゴルフでのグリーン戦略に役立てることができそうです。
データでは、残り距離が長くなるほど1パットできる確率が下がる当然の結果を示しています。
したがって基本的には、上りや下り、右曲がりや左曲がりのラインの影響は少なく、距離の影響が最も大きいことをデータは示しています。
そのため、特別な理由がない限り短い距離を選択した方が賢明です。
また、このデータをスクランブルゴルフへの実践応用を考えた場合、ペアスクランブル(2人で1チーム)では、2.4m付近、スクランブル(4人で1チーム)では4.5m付近が確率の分岐点となり重要な距離といえそうです。
図1が示すように2.4mでは50%の成功率という意味では2人を要します。
4.5mでは、約25%の成功率で4人のうち1人が成功できる距離となります。
この付近の距離を残した場合、特にチームの集中力を高め、事前のライン読み及び先に打った失敗パッティングラインのフィードバックを正確に行い、1打でもスコアを縮める努力を惜しまないことが求められます。

図1 残り距離に対するパット成功率                引用1より改変

上りと下りの影響

基本的には距離が短い場合に、より成功率が高いことを前文では示しました。
しかしながら、上りと下りの影響が全くないというわけではありません。
以下に図1と同距離の上りと下りのパット成功率を示します(引用1)。
この結果より、全くの同距離であった場合は上りパットを選択した方が良さそうです。

約1.0m成功率  上り96%=下り96%  距離が短い場合ではほぼ同等

約2.4m成功率  上り53%>下り48%  2.4m付近では約5%上りが有利

約4.5m成功率  上り25%>下り23%   差は少ないが3パット率は下りが3%程高い

ストレートラインと曲がるラインの影響

結果は、驚くべきことに曲がるライン1.8mの方が2.4m真っすぐ上りよりも成功率は高くなっています(引用1)。
しかも、カップ周りの傾斜が2°以上という稀なケースでの結果です。
2°以下の傾斜では圧倒的に近距離が優利です。
つまり、60cm以上の距離差ではとにかく近距離を選択した方が確率よく、60cm以内の距離差になった時にはラインの単純さや、個人のイメージから成功できそうな方を選択しましょう。

2°以上の傾斜の場合

真っすぐ上り2.4m < 曲がるライン1.8m 曲がるラインやや優利

真っすぐ上り2.1m = 曲がるライン1.8m ほぼ同等

カップが切られる傾斜について

上記カップ周りの傾斜が2°以上というのは非常に稀なケースで全試合のわずか4%に過ぎません。
1~2°範囲の傾斜には54%、0~1°の範囲の傾斜では42%となっています(引用1表1)。
つまり、96%は2°以下の傾斜にカップが切られています。

以上のデータより複数人の打球が可能なスクランブルゴルフでは特に3パットの発生確率が極めて少ないことから特別な理由がない限りは近距離のパットを採用選択することをお薦めします。

表1 18ホール中にカップが切られる傾斜の割合と概算ホール数

■引用文献

(1)マーク・ブローディ(2014) ゴルフデータ革命, プレジデント社, pp54-84、pp193-196