#18『100切りに必要なラウンド統計(スタッツ)』
スコア100ストローク以下でラウンドすることは、ゴルフをする人であれば最初に目標とするスコアでもあり、また長年にわたりゴルフを続けていても100切りすることが達成されない人もいます。
それでは、100切りや80以下でラウンドするためにはコース内でどの程度の技量が必要となるのでしょうか?
そのヒントを#17で紹介した、著者らが研究したセルフスクランブル論文から読み解きたいと思います。(引用1)。
ラウンド統計(スタッツ)とは
ゴルフでいうラウンド統計(スタッツ:Stats)とは、statistics:統計の略式表現として扱われ、USPGAの公式ホームページでもツアープロのStatsを見ることができます(引用2)。
この中には、プレー中に記録できるものから、ドライビングディスタンスなどプレーヤー自身が記録することが難しいものまで様々な統計結果をみることができます。
ツアー選手の詳細なスタッツは明らかにされていく一方で、アベレージゴルファーのスタッツを調査した研究はそれ程多くありません。
著者らが研究したのはアベレージゴルファーのデータであり実験参加者、プレー方式は以下の通りです。
実験参加者
★男性ゴルファー10名
・9ホールの平均スコア46.5±4.8ストローク
・18ホール生涯ベストスコア平均83.3±6.9ストローク
・1Wのクラブヘッドスピード平均40.0±1.8m/s
プレー方式
①ノーマルラウンド(NR)通常通り1球でプレーを行う
②セルフスクランブル2ルール(SC2)毎ショット2回打ちベストボールを選択していく
③セルフスクランブル3ルール(SC3)毎ショット3回打ちベストボールを選択していく
スコアと各スタッツの関係
この研究では、全てのスタッツを9ホールで表しています(表1)。
①NR通常ルールでラウンドした時、46.60打つまり9ホールを約11オーバー程でラウンドするグループを対象に調査が行われました。
ラウンドに換算すると22オーバー約94打となり、100を切るのに必要なスタッツが読み取れます。
以下に調査された7項目を説明します。
(1)FWキープ率:Par3を除く7ホールで1打目にフェアウェイにボールが止まった回数%
(2)パーオン率:Par3では1打、Par4では2打、Par5では3打でグリーンオンした回数%
(3)スクランブル率:パーオンを逃した時にパー及びパー以下でホールアウトした回数%
(4)1パット率:距離に関係なく1パットで終えたホール数の回数%
(5)合計パット数:9ホールの合計パット数(グリーン外からのパットは含めない)
(6)Wボギー以上:9ホールのWボギー以上発生ホールの回数(Wボギーを含む)
(7)パット比率:9ホール総打数に対するパットの割合(パット数÷総打数)
表1 各プレー方式とスタッツ
100切りではパーオン率がスコアの51.2%を予測
本研究では、重回帰分析ステップワイズ法という統計手法を使ってスコアを決める要因として、7つの項目の中から最も重要な項目を分析しました。
その結果、パーオン率が選択されスコアの51.2%を予測できるとわかりました。
つまり、100を切るのに最も重要な項目はパーオン率であり、スコアの約半分を予測してしまうことを説明しています。
本実験で調査されたのは7つの項目と限定的ではあるが、パーオン率が最も重要と考えられ指導者及びプレーヤーは如何にパーオンを増やすかを念頭に入れ、練習またはラウンド中の戦略を組み立てることが求められます。
その他のスタッツも100切りのために必要な要素として参考になり、(1)~(7)の項目で大幅に自身の数字が下回っている場合は、その項目を重点的に改善する必要があると考えられます。
80切りではパーオン率とワンパット率がスコアの87.3%を予測
同様の手法で②SC2の場合を分析すると、パーオン率とワンパット率でさらに高い確率87.3%でスコアを予測することがわかりました。
②SC2では、9ホール38.9打ですので、ラウンドで約78打となり80を切るのに十分な数字です。
80切りするためには、パーオン率38%が必要でこれは18ホールに換算すると約7ホールとなります。
パーオンを増やすためにはアイアンショットだけでなく、フェアウェイに止まらなくても次にグリーンオンを達成するために有利となるティーショットが必要となることも含めて考えなければなりません。
同様にワンパット率は39%必要で同じく約7ホールとなります。むろん1パットで終えるためにはパット技術だけでなく、アプローチショットで如何に短い距離にグリーンオンさせることできるかが求められます。
結論
1)100切りにはパーオン率が最も重要で、18ホール中3ホール(17%)必要である
2)80切りにはパーオン率とワンパット率が重要で、それぞれ18ホール中7ホール必要
実践への応用
1)本実験参加者のドライバーCHSの平均は、40.0±1.8m/sであり、約38~42m/sのCHSの人に該当するデータである。CHSが38m/sに満たない場合は、まずCHSを向上させることが最優先課題となる。
引用文献
(1) Investigating factors that improve golf scores by comparing statistics of amateur golfers in repeat scramble strokes and one-ball conditions
Takeru Suzuki, John Patrick Sheahan, Taiki Miyazawa, Isao Okuda, Daisuke Ichikawa
Journal of Human Sport and Exercise 16(4) 853-865 2020年 (2) PGATOUR Official HP https://www.pgatour.com/stats