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鈴木タケル

#24『パフォーマンス向上のための左打ち練習効果』

右打ちスイングスキルへの影響

前回までは、障害予防のための左打ち練習効果を中心に紹介しました。
今回は、左打ち練習をすることで本来の優勢側である右打ちスイングスキルにどのような影響を及ぼすのかを考察します。

クラブヘッドスピードを対象に即時的効果を検証

著者自身が調査研究したのは、プロ20名とアマチュア20名の合計40名の男性ゴルファーであり、全員が右打ちゴルファーでした。
非利き側である左打ちの練習をすることで利き側のクラブヘッドスピード(CHS)が即時的に速くなるという仮説を立て実験を行いました(図1)。
本研究では、一人の実験参加者に対して2つの実験を行いました(図2)。
利き側トレーニング実験非利き側トレーニング実験です。
利き側トレーニング実験は、プレテストとしてドライバーを3球打ち、そのCHS平均を記録しました。
その後利き側の右でドライバー30球を通常の練習通り打ち、ポストテストとしてドライバー3球のCHS平均を記録しました。そして、トレーニング前後での比較をしました。
非利き側トレーニング実験も同様に最初にプレテストを行ない、次に今度は非利き側で30球を打った後にポストテストを行ないました。
プレテスト右(R)⇒右打ち30球(R)⇒ポストテスト右(R)をRRRとして、対照的に間の練習を左打ちで行う場合をRLRとして、間に行う練習の効果を左右で比較しました。

図1 実験仮説

図2 実験方法プロトコル(RRR=上段、RLR=下段)

クラブヘッドスピードUPに左打ち練習の即時的効果はない しかし…

結果は、トレーニング内容(RRRとRLR)と、トレーニング前後(PREとPOST)の値を要因とした2元配置分散分析を行った結果、交互作用ならびに単純主効果において有意差は認められませんでした。
つまり、プロおよびアマのどちらもトレーニングによる即時的効果は認められなかったという結果になりました(図3)。
プロ群では、差異の平均が0.54±0.44とわずかだが上がっているが、右打ちだけで練習した場合は-0.17±0.67と逆に下がっています。
アマにも同様に右だけで練習するよりはRLRはわずかなCHSの向上がみられます(表1)。
個人差もあり統計的な差は確認できない結果とはいえ、RLRトレーニング後では、プロでは最大にCHS向上がみられた人で1.70m/s、アマでは1.10m/sと1m/s以上のCHS向上効果が表れる場合もあり、CHS向上のためのトレーニングとしては参考となる結果といえます。
また、逆にCHSが実験前と後で低下するのはRRRの方が大きく、プロでは-1.60、アマでは-1.20となり、それぞれRLRの場合よりも大きな低下がみられます。
RRRトレーニングでは同じ側に振ることで同側筋力を30球も続けて使用することになり、疲労の影響が大きく表れたと推測できます。
また、練習の間に左打ちを挟むことで右打ちでは使用されない身体諸機能が活性化され、右打ちに戻った時に普段は使用されていない身体諸機能が右スイングへ動員されることを促進する効果があると考えられ、今後の研究課題となっています。

表1 トレーニング前後におけるクラブヘッドスピードと差異 (m/s)

図3 トレーニング前後のクラブヘッドスピード

参考文献

  1. 鈴木タケル 一川大輔 奥田功夫 北徹朗 庭瀬敏和 坂井昭彦,ゴルフの科学,{1},volume {34},{2022}ゴルフの運動障害予防やスイング改善のための左右クラブヘッドスピード比較研究