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鈴木タケル

#26『猛暑日でのゴルフ場内の各場所とゴルフ用具の表面温度』

2023年の夏は記録的な暑さが続き、温暖化の影響を実感するレベルに達し、地球規模で解決しなければならない問題として今後はさらに注目されることが予想されます。
2024年ゴルフ業界においても、さらに暑くなることが予想される夏場のゴルフ場で如何に涼しく安全にプレーするための提案や製品開発が求められています。
今後も高齢者ゴルファーに頼らざる得ないゴルフ業界にとって離反ゴルファー抑止のためにも夏のゴルフ場暑さ対策は早急な解決策が求められる課題の1つです。
そのためにも、まずは猛暑日のゴルフ場内の各場所とゴルフ用具の表面温度の実態調査をすることには意義があります。
今回は、2023年7月の猛暑日に調査した各場所の表面温度を報告します。

「猛暑日」とは、1日を通して最高気温が35℃以上を記録した日のことを指す、次に30℃以上を記録した日を「真夏日」25℃以上の日を「夏日」として定義されています(気象庁)。
さらに、2022年には日本気象協会は、最高気温が40℃以上となった日を「酷暑日」として、猛暑日以上の暑さへの注意喚起を呼びかけています。

WBGTとは、Wet Bulb Globe Temperature湿球黒球温度のことで熱中症を予防することを目的に提案された指標のことで「暑さ指数」として知られています。
(公財)日本スポーツ協会発行の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)によると、気温35℃以上WBGT(暑さ指数)が31℃以上の時には、運動は原則中止とされています。

■北関東Aゴルフ場(2023年7月29日)天候晴れ
< 9時時点の気象条件 > 気温 34.3℃ WBGT 32.3℃ 風速0.18m/s
<12時時点の気象条件> 気温 39.3℃ WBGT 34.0℃ 風速0.29m/s
※計測日は最高気温35℃を超えWBGTも31℃を超える快晴無風の典型的な猛暑日でした

ティイングエリア/グリーン/バンカー/カート道/赤色ゴムチップ道 (図1)

黒色ドライバーヘッド(カバーなし)/アイアンヘッド/ボール/乗用カートの座面メッシュカバー部 (図2)/バンカーレーキグリップ部分

※事前に赤外線サーモカメラ画像で高温となる場所を確認した後に,全ての表面温度計測には正確な計測が可能な放射温度計(TASCO社製)を使用し計測を実施しました(図3,4)。

図1 赤色ゴムチップ道 
図2 カート座面メッシュカバー部
図3 赤外線サーモカメラ画像
図4 放射温度計

9時時点での表面温度と12時時点の表面温度に加えて上昇温度差として9時と12時の温度の差を記録しました。
ゴルフコース内各場所での調査結果を表1に示し、ゴルフ用具の表面温度調査結果を表2に示しました。グリーン上など芝生の上は、外気温とおおよそ同等となっていますが、バンカー内だけは9時時点で、すでに高温となっているため夏場の集中的なバンカー練習などは避けた方が賢明です。
カート道やゴムチップ道などの温度上昇は大きく高温なため今後は色や材質、機構改善の余地が考えられます。
ゴルフ用具の表面温度では、黒色ドライバーヘッドとカート座面の温度および上昇温度差が極めて大きく、12時時点で表面温度は60℃を超えています。
低温やけどは,44~50℃前後のものに皮膚が直接数分間触れ続けることで発症するため直接触る用具などは注意が必要と考えられます。
今回調査した場所や用具は、今後に色や素材,機構の改善など改良の余地が考えられ、更に暑くなることが予想される夏場のゴルフを如何に涼しく安全にプレーするための提案及び製品開発の足掛かりとなることを願っています。
また、高温となったドライバーヘッドやボールを使うことで反発効果などのゴルフ技術に関する影響についても引き続き調査が必要となります。

表1 ゴルフコース内各場所での表面温度実態調査(℃)

表2 ゴルフ用具の表面温度実態調査(℃)

1.猛暑日におけるゴルフ場内各場所やゴルフ用具の表面温度変化についての実態調査
2023年 第33回 日本ゴルフ学会大会 熊本県天草市 口頭発表抄録 
鈴木タケル(PGA/武蔵野美術大学大学院)、橋口剛夫(帝京科学大学)、浅井泰詞(高千穂大学/武蔵野美術大学大学院)、服部由季夫(星槎大学/武蔵野美術大学大学院),北 徹朗(武蔵野美術大学)