#39『ボールの違いによるパット成功率の比較』
「バランスボールVS.アンバランスボール」
前回#38では、市販されているゴルフボールのバランスを調べる方法として、古典的な塩水を利用した方法を紹介しました。
この他にも、ボールを台座にのせて回転させ遠心力を活用してボールのバランスを調べる方法もあります。
#38では、塩水を利用した調査で無作為に購入した36球の未使用ボールから12球のバランスボール、12球のアンバラスボール、さらに12球のどちらともいえないボールを判別しました。
今回は、どちらともいえないボールを除いた、選別されたバランスボールとアンバランスボールを使用して、それぞれのボールの違いによりパッティングパフォーマンスに差異が生じるかを調査した結果を報告します(引用1)。
バランスボールVS.アンバランスボール
ヒトによるパッティングで検証
ボールバランスの違いがパットの成功と失敗に影響するのかを検証するために、2.4m距離の同じ位置から50球をそれぞれのボールでパットし、カップインの成功数を比較しました(図1)。
プロ2名とアマ1名のゴルファーが実験に参加し、合計100球を打ちました。
バイアスや先入観が発生しないように実験意図については実験終了後に伝え、実験参加者はボールバランスの違いはおろか、ボールの実験であることすら伝えられない状況でパットを打ちました。
3名のみの結果ではあるが、バランスボールが特に優れていたという結果は確認できませんでした(表1)。
むしろ、プロBとアマではアンバランスボールの成功数が多い結果となりました。

表1.ヒトによる実験結果

傾斜台を使用した検証
同じ位置にボールが転がるように設計された傾斜台を使用し、各50球のボールを転がして検証しました(図2)。
2.4m距離からカップを約13cm(ボールの円周=ボール1回転)過ぎる距離に止まる距離感でカップの真ん中からカップインするように傾斜台を設置し、ランダムな順序で、それぞれのボールが転がされ比較をおこないました。
結果は、ほぼ同等の成功数の結果となり、わずか2球ではあるが、アンバランスボールの方が成功数の多い結果となりました(表2)。

表2.傾斜台(Machine)を使用した比較結果

パットでの影響は少ない
今回は、塩水で選別されたバランスボールとアンバランスボールのパット成功数の比較をおこないました。
実験結果から、塩水の浮力で、はじめて表れる程度のバランスの違いであれば、パットでの影響は極めて少ないと考えられました。
水面上では、地上に比べ摩擦や重力が少ない状態といえます。
実際にヒトがグリーン上でパッティングをすると、地面の摩擦や重力の影響が大きく、ボール重心のわずかな違いによる影響は極めて少ないと推測されます。
現代ボールでのパッティングでは、ボールの違いよりも技術的な要因やグリーン面の凹凸などの影響が大きいと考えられ、ボール重心のバランスに過度に拘る必要はないと考えられました。
しかし、空中を飛ぶボール、ショットされたボールに関しては不明であり、世界中の研究者からの報告が待たれます。
引用文献
- 鈴木タケル、浅井泰詞、北徹朗(2024).塩水を利用したゴルフボールのバランステストとボールバランスの違いがボール転がり性能に及ぼす影響.日本ゴルフ学会第34回大会