#46『スタンスの違いによるクラブヘッドスピードと膝への負担の差異』
ゴルフのスタンスには、個人差があり広いスタンスや狭いスタンス、または、つま先の向きなどにより様々なスタンスの方法が存在します。
これらのスタンスの方法の違いがクラブヘッドスピードに及ぼす影響を調査した研究をご紹介します(引用1)。
また、ゴルフスイングの膝への負担は、歩行時よりも大きく、変形性膝関節症:Osteoarthritis of the kneeの発症や進行の可能性を高めることが先行研究より報告されています(図1)。
この研究では、スタンス方法の違いが膝の負担にどのように影響するかも調査されています。

実験参加者
実験には、健常な成人ゴルファー20名(男性15名、女性5名)が参加しました。
平均年齢23歳の2年以上のゴルフ経験を有する、膝の外傷や障害歴のない人が実験に参加しています。
5種類のスタンスで実験
この研究では、スタンス幅とリード足(右打ちの人では左足)のつま先の方向を組み合わせて調査されています。
スタンス幅は3種類、つま先の向きは2種類、合計5種類のスタンスを調査しています(図2)。
ドライバーショットを実施して、KAM = Knee Adduction Moment(膝内転モーメント/膝外反モーメント)簡単にいうと膝への負担を調査しています(図2)。
- 自選スタンス:普段のスタンス(スタンス幅、つま先の向き、ともに自選)
- 広いスタンス:普段のスタンスから20%広い
- 狭いスタンス:普段のスタンスから20%狭い
- ストレート:リード足(左足)のつま先方向ストレート(toe angle = 0°)
- つま先を外:リード足のつま先の方向をtoe-out(約30°外旋)
※②と③の時は自選のつま先の向きで、④と⑤では自選のスタンス幅が採用された

スタンスの種類ではクラブヘッドスピードに変化はない、しかし・・・
この実験で、採用されたスタンスの方法では、①自選スタンス、つまり自身が普段採用しているスタンスとのクラブヘッドスピードには差異がみられませんでした。
しかしながら、膝への負担を表すKAM値には差異が確認されています(図3)。
②広いスタンスと⑤リード足の向きを30°開いたスタンスでは、①自選スタンスと比較して、それぞれ23%と30%も膝への負担が軽減されています。
この2つのスタンスでは、クラブヘッドスピードを下げることなく、膝への負担を軽減できています。
逆に狭いスタンスでは、負担は増加しました。

実践への応用
今回の実験設定では、自選のスタンスから20%の広い及び狭いスタンスが採用されましたが、さらに、広いや狭いスタンスではクラブヘッドスピードへの影響も考えられるため、様々なスタンスの広さを試すことも必要です。
また、この実験では、スタンスの違いによりクラブヘッドスピードに差異はなかったが、膝への負担つまり身体にかかる影響は変わることから、スライスやフックや高低などのボール弾道に及ぼす影響は起こると考えられ、スタンスの種類を応用した弾道調整やスイング改善方法をおこなえる可能性があり、今後の検討課題といえます。
さらに、ゴルフの障害予防として、既に左膝や腰などに 痛みを感じている場合は、スタンスの種類を試すことで改善される場合もあると考えられ、比較的容易な方法として試す価値はありそうです。
引用文献
1. Hooker, Q. L., Shapiro, R., Malone, T., & Pohl, M. B. (2018). MODIFYING STANCE ALTERS THE PEAK KNEE ADDUCTION MOMENT DURING A GOLF SWING. International journal of sports physical therapy, 13(4), 588–594.