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鈴木タケル

#47『PGA Tour38年間のドライバー飛距離とパーオン率の変化』

PGA Tour(以下、PGA)は、アメリカを中心に男子プロゴルフツアーを運営する団体であり、そのトーナメントの総称でもあります。
PGAでは1987年から、ドライバーの飛距離やパーオン率の記録を公式ホームページで公開しています(引用1)。また、2003年からはショットリンクシステムが導入され、グリーン上では5㎝以内、その他の場所では1ヤード以内の誤差で、すべてのショットが記録されています。
このショットリンクシステムによって蓄積された膨大なデータの分析により、ゴルフスコアの実態が明らかになってきました(引用2)。
今回は、ゴルファーの関心が高いドライバー飛距離と、スコアに大きな影響を与えるパーオン率に着目し、過去38年間の記録からショットパフォーマンスの動向を調査していきます(引用3)。

PGAにおける1987年から2024年までの38年間にわたるドライバー飛距離とパーオン率の平均を調査しました。
PGAでは毎年およそ40試合が開催され、約200名の選手が登録されています。
それぞれの年ごとにツアー全体の平均値を算出して分析に用いました。
なお、ドライバー飛距離とパーオン率は以下のように定義されています。

ドライバー飛距離(Driving Distance)
1ラウンド(18ホール)につき2ホールで計測されます。これらのホールは風の影響を減らすため、互いに反対方向に設定されています。
ボールがフェアウェイに止まったかどうかに関係なく、最終的な停止地点までの距離が記録されます。

パーオン率(GIR: Greens in Regulation)
Par3では1打目、Par4では2打目、Par5では3打目でグリーンに乗せること。

過去38年間におけるドライバー飛距離とパーオン率の変化を図1に示しました。
ドライバー飛距離は、計測が始まった1987年には262ヤードでしたが、2024年には300.2ヤードとなり、初めて平均値が300ヤードを超えました。
つまり、この38年間でおよそ40ヤードの伸びが見られました。一方、パーオン率については大きな向上は見られませんでした。
しかし、2003年の65.4±2.8%と2023年の67.1±2.4%を比較すると、有意な差が確認されました(p<0.01)。約2%の上昇ではありますが、パーオン率にとっては意味のある変化といえます。
しかしながら、ドライバー飛距離のような継続的な向上は見られず、パーオン率は増減を繰り返しています。

図1.PGAツアーにおける過去37年間のドライバー飛距離(Driving Distance)とパーオン率(GIR: Greens in Regulation)の変遷 引用1より作図

ドライバー飛距離は、この38年間で合計38ヤード伸びており、偶然にも「1年につき1ヤード」のペースで増加してきました。
こうした伸びには、選手の体力向上、計測機器を活用した弾道改善、そして道具の進化が大きく影響していると考えられます。一方、パーオン率には大きな変化は見られませんが、1~2%の差であっても意味のある変化として捉える必要があります。
過去から現在にかけて、パーオン率はおおよそ66%(18ホール中12ホール)が基準となると考えられます。この割合が大きく変化してしまうと、ゴルフの魅力が損なわれる可能性もあります。
そのため、今後パーオン率がさらに向上する場合には、コースの難易度を高めたり、道具に規制を加えたりすることで調整が行われると予想されます。

  1. PGATOUR公式HP内STATS https://www.pgatour.com/stats (閲覧日:2025年1月8日)
  2. Broadie, Mark, Impact of Distance Changes in Professional Golf, With a Focus on the ShotLink Era (March 12, 2023).
  3. 鈴木タケル. PGA Tour38年間のドライバー飛距離とパーオン率の変遷. 第34回日本ゴルフ学会大会, 日本ゴルフ学会(2025年2月26日).