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鈴木タケル

#55『チョークダウンショットとノーマルショットの比較』

― ドライバーの弾道特性に着目して ―

ドライバーショットでは、飛距離と方向性の両立が求められます。
特に、近年はクラブの長尺化によりヘッドスピードと飛距離が増加することが報告されている一方で(引用1、2)、長尺化は方向性を損なうリスクも併せ持ちます。
そのため、現場ではティーショットの方向性を確保したい場面で、クラブを短く握る「チョークダウンショット」がしばしば用いられます。
アベレージゴルファーからツアープロまで、狭いホールや風の影響を受ける状況で「短く持つ」という選択は経験的に有効とされていますが、実際に弾道特性がどのように変化するのかを定量的に示した報告は十分ではありませんでした。
この問題に対して、杏林大学保健学部の研究者、深田喜八郎氏と我々ティーチングプロが協力して実験をおこなった、2025年日本ゴルフ学会大会で発表された研究を紹介します(引用3)。
この研究では、ドライバーにおけるノーマルグリップと2インチ短く握るチョークダウングリップを比較し、飛距離・ボール速度・打ち出し角度などの弾道特性への影響を検討しました。

対象はアマチュアゴルファー6名およびティーチングプロ6名の計12名で、使用クラブは実験参加者自身のドライバーを用いました。

条件は、
①通常の位置で握るノーマルグリップ条件
②ノーマルグリップから2インチ(約5㎝)下げて短く握るチョークダウングリップ条件の2条件を設定しました(図1)。


屋外練習場にて、各条件下で10球ずつ打球し、弾道計測器(トップトレーサー・レンジ)を用いて、フラットキャリー、総飛距離、ボール速度、打ち出し角度、頂点、着地角度、滞空時間、曲がり幅、中心からのズレの計9項目を測定しました。

図1.実験設定

表1にドライバーの弾道特性の比較を示しました。
全体の結果では、フラットキャリー、打ち出し角度、頂点、着地角度、滞空時間がチョークダウンにおいて有意に低い値となりました。
プロの結果では、フラットキャリー、総飛距離、ボール速度、打ち出し角度、頂点、着地角度、滞空時間が有意に低下しました。
一方、アマチュアの結果では、頂点のみがチョークダウンにおいて有意に低い値となりました。

表1.ドライバーの弾道特性の比較

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チョークダウンにより飛距離およびボール速度がプロにおいて有意に低下した結果は、クラブを短く握ることでスイングアークやモーメントアームが縮小し、エネルギー伝達効率が低下したためと考えられます。
先行研究では、ドライバーを長尺化することでヘッドスピードや飛距離が増加することが示されており(引用1、2)、本研究の結果はその逆方向の変化として理解できます。
さらにプロにおいて、打ち出し角度や頂点、着地角度、滞空時間が低下したことから、チョークダウンは弾道を低く抑える効果を持つことが明らかとなりました。
これはクラブを短く握ることでスイング半径が縮小し、インパクト時の入射角が鋭くなったことが一因と考えられます。
一方、アマチュアは頂点のみ有意な低下が認められ、プロほどの差は認められなかったことから、チョークダウンの影響は限定的であると考えられます。

  • ドライバーを約2インチ短く握るチョークダウンショットは、特にプロにおいて飛距離・ボール速度・弾道高さを抑える効果を持つ。
  • 曲がり幅や中心からのズレに有意な変化はみられなかったため、方向性そのものを直接改善する手段というよりは、低い弾道を作り出す戦術的手段として位置づけられる。
  • 風向きやホールレイアウト(向い風、打ち下ろしホール)に応じたショット選択として有効な可能性がある。
  • アマチュアでは、プロほどの弾道変化は認められず、影響は限定的であった。スイング再現性や入射角コントロールの違いが背景にあると考えられ、安易な「短く持てば曲がらない」という認識には注意が必要である。
  1. Kenny, I.C., Wallace, E.S., and Otto, S.R. (2008). Influence of shaft length on golf driving performance. Sports Biomechanics, 7(3), 322–332.
  2. Wallace, E.S., Otto, S.R., and Nevill, A. (2007). Ball launch conditions for skilled golfers using drivers of different lengths in an indoor testing facility. Journal of Sports Sciences, 25, 731–737.
  3. 深田喜八郎、鈴木タケル、大竹泰輔.(2025年11月15日).チョークダウンショットとノーマルショットの比較―ドライバーの弾道特性に着目して―.日本ゴルフ学会第35回大会発表抄録集,pp. 46–47.日本ゴルフ学会.