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鈴木タケル

#56『ドライバーにおける通常スタンスと狭いスタンスの弾道比較』

ゴルフのスタンス幅は、クラブが長くなるほど広くなるのが一般的とされており、日本プロゴルフ協会の基本ゴルフ教本においても、ドライバーショットのスタンス幅は「肩幅程度」が望ましいと明記されています。
また、現場の指導者の間では「3~4足幅分のスタンスが理想的」とする見解も広く共有されています。
しかしながら、スタンス幅の違いが実際のショット弾道にどのような影響を及ぼすのかについては、科学的な検証が十分におこなわれてきませんでした。
スタンス幅に関する先行研究では、Kimら(2022)が、スタンス幅の違いが膝関節への負担に影響することを報告しています(引用1)。
しかしながら、スタンス幅の違いが弾道に与える影響を直接検証した研究はほとんどなく、「狭いスタンスでは曲がらない」「方向性が安定する」といった指導現場での経験則が根拠となってきました。
以前ゴルフラボ#46でも、スタンスに関しては取り上げました。
今回は、東京都市大学准教授の椿原徹也氏と著者が協力しておこなった、2025年日本ゴルフ学会大会で発表された研究を紹介します(引用2)。
通常のスタンスと極端に狭いスタンス(両足をつけた状態)のドライバー弾道を比較し、スタンス幅の違いが飛距離・弾道特性・方向性に与える影響を定量的に明らかにすることを目的とした研究です。

対象はアマチュアゴルファー6名およびプロゴルファー6名の計12名(平均年齢43.2±11.2歳)で、測定は練習場に設置された弾道測定器(Top Tracer)を用いておこなわれました。
使用クラブは各自の普段使用するドライバーとしました。  
条件は、
①ノーマルスタンス:普段のスイングで採用しているスタンス
②狭いスタンス:ボール1個分以内という極端に狭いスタンス
(ボール位置は左足かかとの延長線上に指定)
を設定し、2つの条件で10球ずつ打球しました。
計測項目は、フラットキャリー、総飛距離、ボール速度、打ち出し角度、頂点の高さ、着地角度、滞空時間、曲がり幅、中心からのズレの計9項目で、ノーマルスタンスと狭いスタンスをt検定(有意水準1%)で比較検討しました(図1)。

図1.実験設定

ノーマルスタンスと比較して狭いスタンスでは、フラットキャリー・総飛距離・ボール速度のいずれもが有意に低下し、飛距離の減少が明確に確認されました(図2)。
アマチュアでは平均フラットキャリーが183.3ヤードから133.5ヤードへ、プロでは245.3ヤードから183.5ヤードへと、それぞれ大幅に低下しました。
さらに、打ち出し角度・頂点の高さ・着地角度も有意に低下し、狭いスタンスでは全体的に低弾道になる傾向が確認され、滞空時間についても同様に有意な短縮が認められました(図3)。
一方、曲がり幅については、ノーマルスタンスと狭いスタンスの間に有意な差は認められませんでした。
中心からのズレも、狭いスタンスの方が標準偏差は大きかったものの、統計的な有意差は示されませんでした。

図2.飛距離とボール速度の結果
図3.角度・高さと滞空時間の結果
  • 極端に狭いスタンスでドライバーを打つと、飛距離・ボール速度・弾道高さが有意に低下する。「狭く構えると飛ばなくなる」という経験則は、データによって裏付けられた。
  • 一方で、曲がり幅や中心からのズレには有意差が認められなかった。「狭く構えると曲がらない」という指導現場でよく聞かれる助言は、少なくとも方向性の観点からは必ずしも正確ではない可能性がある。
  • ただし、今回の実験では1名のみ、極端に狭いスタンスでも飛距離が伸びるという例外的な結果が得られており、体格・柔軟性・スイングタイプなど個人差が関与している可能性がある。一律的な指導よりも、個人特性に応じたスタンス幅の選択が重要である。
  • 本研究は通常スタンスと極端に狭いスタンスの2条件の比較であり、広いスタンス・やや狭いスタンスなど段階的な検証は今後の課題である。科学的根拠に基づいたスタンス幅指導の確立に向けて、さらなる研究の蓄積が期待される。
  1. Kim, S.E., Pham, N.S., Park, J.H. et al.(2022). Potential biomechanical risk factors on developing lead knee osteoarthritis in the golf swing. Scientific Reports 12, 22653.
  2. 椿原徹也、鈴木タケル.(2025年11月15日).ドライバーにおける通常スタンスと狭いスタンスの弾道比較.日本ゴルフ学会第35回大会発表抄録集,pp. 36–37.日本ゴルフ学会.