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鈴木タケル

#59『ゴルフのウォームアップについて』

ゴルフのショットの質は、身体やスイングの準備状態に大きく左右されます。
実際、ラウンド前やレンジでのウォームアップの方法によって、クラブヘッドスピードや飛距離、方向性が変化することが、複数の研究で示されています。
今回は、ゴルフのウォームアップに関する8本の研究を通じて、何が効果的で、何が現状の課題なのかを整理します(引用1~8)。

1,040名のアマチュアゴルファーを3施設・3週間にわたり直接観察した調査では、プレーや練習の前に何らかのウォームアップを行っていたのは54.3%にとどまり、残りの45.7%はまったく何も行っていなかったことが報告されています(引用4)。
ウォームアップを行っていた人のうち88.7%が素振りを行っており、最も多く見られた内容でした。
別の系統的レビューでも、ウォームアップに有酸素運動を取り入れていたゴルファーは全体の2%以下にとどまり、実施していた場合でも素振りや軽いストレッチのみと短時間で済ませるケースが大半だったとされています(引用5)。

まず、32件の研究を統合したメタ分析では、検討された基準のうち79項目でウォームアップによる改善が確認され、有害性を示す根拠は乏しいとされています(引用2)。
ゴルフに特化した、長期的ウォームアップ効果を検証した研究でも効果が示されています。
男性ゴルファー10名にゴルフ専用のウォームアッププログラムを5週間・週5回実施してもらったところ、測定開始から2週目(プログラム開始週)の時点でクラブヘッドスピードが3~6m/s(12.8%)向上し、7週目には7~10m/s(24.0%)まで伸びました。
年齢とハンディキャップをそろえた対照群10名にはほとんど変化が見られませんでした(引用3)。
さらに、エリート男子ゴルファー15名が3種類のウォームアップを別々の日に行った実験では、アクティブダイナミック・ウォームアップにチューブを使った機能的レジスタンス運動を組み合わせた場合、アクティブダイナミック・ウォームアップのみの場合と比べて飛距離が約15ヤード(+5.6%)伸び、10球中ボールを芯で捉えた球数も約1球(+13%)増えました。
一方、クラブヘッドスピードと方向性には差が見られませんでした(引用1)

一方、ストレッチの種類には注意が必要です。
競技志向の男性ゴルファーを対象にした研究では、ショット前に受動的な静的ストレッチを行うと、クラブヘッドスピードが4.19%、飛距離が5.62%、方向性の精度に至っては31.04%も低下したと報告されています(引用6)。
この研究では、ボールを芯で捉える割合も16.34%低下していました。
同じ研究者による追跡研究では、静的ストレッチによるショットの質の低下(−31.3%)が60分後まで続いていたとされています(引用5)。
対照的に、動的ストレッチには逆の効果が見られます。
5番アイアンを用いた研究では、動的ストレッチを行うと、静的ストレッチを行った場合と比べてクラブヘッドスピードが1.9m/s、ボールスピードが3.5m/s、まったくストレッチをしない場合と比べてもそれぞれ1.7m/s、3.3m/s有意に高くなりました(引用7)。
また、前述のレビューでは、ショット直前にジャンプを3回行うことでクラブヘッドスピードが2.2%向上したという研究も紹介されています(引用5)。
ショット直前に行うなら、静的ではなく動的なストレッチを選ぶ方がよさそうです。

近年では、ウォームアップとプレショットルーティンを組み合わせる研究も進んでいます。アマチュアゴルファー15名を、①活動後増強:PAP(Post-Activation Potentiation)を狙ったウォームアップ(アクティブダイナミック・ウォームアップ+チューブを使った機能的レジスタンス運動)とプレショットルーティンの組み合わせ、②プレショットルーティンのみ、③PAPウォームアップのみ、の3群(各5名)に分け、6週間・週3回実施した研究では、統計的な有意差こそ出なかったものの、3つのプログラムいずれでもドライバーのパフォーマンスに一定の改善傾向が見られました(引用8)。
活動後増強(PAP)とは、高強度の筋収縮を行った後に、神経の興奮や筋の収縮性が高まり、一時的に発揮できる力やスピードが向上する現象です。
例えば、スイング直前にジャンプを行うと、クラブヘッドスピードが上がることがあります(引用5)。

・ラウンド前は、静的ストレッチよりも体を動かしながら行う動的ストレッチを選ぶとよさそうです。
・機能的なレジスタンス運動を取り入れたアクティブなウォームアップは、飛距離やボールコンタクトの安定性の向上に有効な可能性があります。z・「まったくウォームアップをしない」ゴルファーは45.7%にのぼるとされ、数分間の準備だけでも取り入れる価値がありそうです。・ウォームアップとプレショットルーティンの組み合わせについては、まだ小規模な研究しかなく、現時点では効果ははっきりしていません。今後の研究が待たれます。

引用1:Tilley, N. R., & Macfarlane, A. (2012). Effects of different warm-up programs on golf performance in elite male golfers. International Journal of Sports Physical Therapy, 7(4), 388-395.
引用2:Fradkin, A. J., Zazryn, T. R., & Smoliga, J. M. (2010). Effects of warming-up on physical performance: A systematic review with meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research, 24(1), 140-148.
引用3:Fradkin, A. J., Sherman, C. A., & Finch, C. F. (2004). Improving golf performance with a warm up conditioning programme. British Journal of Sports Medicine, 38(6), 762-765.
引用4:Fradkin, A. J., Finch, C. F., & Sherman, C. A. (2001). Warm-up practices of golfers: Are they adequate? British Journal of Sports Medicine, 35(2), 125-127.
引用5:Ehlert, A., & Wilson, P. B. (2019). A systematic review of golf warm-ups: Behaviors, injury, and performance. Journal of Strength and Conditioning Research, 33(12), 3444-3462.
引用6:Gergley, J. C. (2009). Acute effects of passive static stretching during warm-up on driver clubhead speed, distance, accuracy, and consistent ball contact in young male competitive golfers. Journal of Strength and Conditioning Research, 23(3), 863-867.
引用7:Moran, K. A., McGrath, T., Marshall, B. M., & Wallace, E. S. (2009). Dynamic stretching and golf swing performance. International Journal of Sports Medicine, 30(2), 113-118.
引用8:Yeemin, W., Kemarat, S., & Theanthong, A. (2020). The effects of post activation potentiation warm-up and pre-shot routine programs on driving performance in amateur golfers. PLOS ONE, 15(10), e0240881.